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環境に引っ張られる脳「いい場所」に行ける人だけが、選ばれる。今日はこの話を脳の観点からします。
まず、5秒のセルフチェック
最近、こんなことを感じていませんか。
- 周りの仕事の遅さに、イライラすることが増えた
- 「なんでこんなこともできないんだろう」と思う頻度が上がった
- 組織がトロい、意思決定が遅いと感じる
- 有名で安定した会社にいるが、内心「もうこの会社はだめだ」と思いながら働いている
- ソフトバンクが時価総額でトヨタを抜いたと聞いても、自社の未来とは結びつかない
- 自社が業界の常識を塗り替える勢いで伸びる、とは本気で思えない
- 「自分も200%成長する」と言われると、少し非現実的に感じる
- 最近、「まあこんなもんか」と思うことが増えた
ひとつでも当てはまった方へ。これは、あなたの能力の話でも、忠誠心の話でもありません。あなたの脳が、今いる環境に静かに引っ張られているサインです。
結論から言います。脳は、周囲の水準を無意識に「自分の基準」にしてしまう。そして低い環境にいるほど、その劣化に痛みが伴わない。だから、気づけない。
なぜ「環境」がここまで脳を左右するのか
人間の脳には、参照点(reference point) という機能があります。
私たちは、物事の価値を絶対的な数字で判断していません。「周りと比べてどうか」で判断しています。年収も、仕事のスピードも、野心の大きさも、すべて周囲を基準にした相対評価で脳が処理している。
これは、行動経済学のプロスペクト理論が示してきた、脳の基本仕様です。
何が起きるか。
低エネルギーで、成長スピードの遅い環境に長くいると、脳の参照点がその水準まで静かに下方修正される。「これくらいが普通」「まあこんなもんか」の基準が、知らないうちに下がっていく。
逆に、勢いがあって、水準の高い人たちに囲まれていると、参照点が上がる。同じ能力でも、目標設定も、行動の前のめりさも、まったく変わってきます。
一番こわいのは、「痛みがない」こと
ここが、最も重要なポイントです。
参照点の下方修正は、痛みを伴いません。
「最近やる気が出ない」と落ち込むわけでもない。むしろ「居心地がいい」「安定している」「現実的になった」という、ポジティブな感覚として現れます。
「うちがソフトバンクみたいに伸びるなんて、さすがに言い過ぎでしょ」——そう笑った瞬間に、参照点は下がっています。でもそれは、謙虚さや現実主義という、賢くてバランスの取れた態度の顔をしてやってくる。
だから、気づけない。痛くないから、劣化していることに気づけない。
ソフトバンクは、実際にトヨタの時価総額を抜きました。「日本の会社が日本の象徴を抜く」が、現実に起きた。その世界に、私たちは今いる。
なのに、自社について「うちもそのくらいの勢いで伸びる、給与も上がる、未来は明るい、だから自分も成長する」と200%本気で思えていないとしたら——それは会社の問題である前に、あなたの脳が「そこまでは無理」と勝手に天井を引いている、という参照点のサインです。
脳の未来予測機能(prospective coding)は、本人が「描ける」と感じた範囲しか、報酬系を動かしません。「うちは伸びる」と本気で描ける脳は、その未来に向けてドーパミンが先行して出て、日々の行動が前のめりになる。「まあ無理でしょ」と縮こまる脳は、同じ環境にいても報酬予測が立たず、努力のエンジンに火がつかない。
同じ場所にいても、見えている未来が違えば、出力が変わる。
だから、答えはシンプルです——環境を変える
参照点が環境で決まるなら、結論は明確です。
稼ぎたいなら、いい環境に行く。
成長スピードの速い企業に行く。水準の高い人が集まる場所に身を置く。本気でキャリアを上げたいなら、いいMBAを取りにいく。あなたの「普通」を、一段上の集団の「普通」に置き換える。
これは精神論ではありません。脳の参照点を物理的に上書きするための、最も確実な方法です。高い環境に入れば、上方比較が働き、目標水準も、値付けも、行動の基準も、引き上げられていく。
ぬるま湯の有名大手で「もうこの会社はだめだ」と思いながら働き続けることが、一番もったいない。安定だと感じているその毎日に、脳は小さな諦めを学習し続けています。
でも——変えるの、怖いですよね
ここで、ほとんどの人が止まります。
転職は怖い。MBAは大変だしお金もかかる。引っ越しはめんどくさい。「わかってるけど、動けない」。
それでいいんです。当然なんです。
なぜなら、脳は変化を「損失」として処理するようにできているから。現状を手放すことに対して、扁桃体が危険信号を出す。これは意志が弱いのではなく、脳の防御機能が正常に働いている証拠です。
だから、いきなり環境を変えようとしなくていい。
順番が逆なんです。
外側の環境を変える前に、まず内側の参照点——脳そのものから変える。脳の天井が上がれば、「いい環境に行く」という選択が、怖いものではなく、自然な次の一歩になります。
アクションプラン:明日からできる、最初の一歩
たとえば、明日のランチ。
いつもの店を、一軒だけ変えてみてください。
これは気分転換の話ではありません。脳科学の話です。見慣れない内装、初めてのメニュー、知らない客層——その新奇な刺激は、海馬(特に歯状回)の神経新生を促し、ドーパミン系を動かします。固まりかけた脳の参照点に、小さな揺らぎが入る。
もう一歩進めるなら、いつもより少し高い店を選ぶ。あなたの「普通」より一段上の客層がいる空間に、30分だけ身を置く。隣の人が何を話しているか、どんな時間の使い方をしているか——無意識の参照点が、静かに上書きされ始めます。
会社を変えるのは怖い。MBAは大変。引っ越しはめんどくさい。当然です。でも、ランチの店一軒なら、明日からできる。
参照点は、こうした小さな新奇刺激の積み重ねで、少しずつ上げ直せる。神経可塑性は、何歳からでも、どんなに小さな一歩からでも働き始めます。
結論:天井を上げるのは、会社ではなく、あなたの脳
もう一度、整理します。
会社のせいでも、あなたの能力のせいでもありません。脳が天井を引いているだけ。そして、その天井は何歳からでも上げ直せます。
まずは、あなたの脳の「参照点タイプ」を知ることから
「自分の脳は今、どの状態なのか」——それを知らずに動くのは、地図を持たずに旅に出るようなものです。
アルファでは、あなたの脳の参照点がどのタイプかを診断する Alpha Brain Type診断 を無料公開しています。15問・5分。今、自分の脳がどこに引っ張られているのかが分かります。
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坂下絵美。女子学院→東京大学薬学部→東京大学薬学系研究科(池谷研究室・脳科学/海馬研究)→コロンビア大学教育大学院(臨床心理学)。アルファ・アドバイザーズCOO(2020年〜)。アルファは18年間で累計8万名以上のキャリア・教育・メンタルをサポート。えみ自身も直接指導にあたる実務者です。